天使の歌
邂逅
キュティ
「……何処 行っちゃったんだろ?」
田舎の小さな村の端に在る森の手前で、少し長めの黒髪を靡かせながら、青年は呟いた。
銀のシンプルな眼鏡を掛け、茶色の長袖の上に白い服を着、茶色のズボンに踝丈のブーツを履いている。
背中には、薄い黄色の翼が生えている。
賢そうな茶色の瞳が、晴れた空に輝く太陽の光に、綺羅綺羅と輝いていた。
「あ、居た居た。」
黒髪の青年は捜していた人物を見付けたようで、口に右手を近付けて叫ぶ。
「お〜い、キュティ!母さんが、もう お昼に しようってー!!」
彼の視線の先に居たのは、1人の少女だった。
長く艶やかな金髪をツインテールに縛り、短いピンクのスカートに、長いロングブーツを履いている。
左の肩にだけ、青年と同じ色の翼が生えていた。
キュティと呼ばれた少女は、森で林檎を拾っていたようだ。
「は〜い。」
明るく澄んだ声。
キュティは声を掛けて来た青年を、水色の瞳で見た。
「先に行ってるからねー!!」
「うん。」
青年の言葉にキュティは頷くと、林檎を詰めた籠を手に取り、歩き出した。
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