天使の歌

その時。

「そんなに叫んだら、痛めてしまうわ。」

おっとりした声が、キュティの躰を、ふわっと包み込んだ。

「誰!?」

慌てて顔を上げると、黒い髪、黒い瞳の男女が、立っていた。

その姿を見て、キュティは息を飲む。

「……人間……?」

彼等の背中に、翼は無かった。

「そうです、人間です。」

女性は優しく笑い、自ら名乗る。

「私は、神崎 桜(かんざき さくら)。」

「俺は、神崎 樹(かんざき いつき)。」

2人は、良く似ている。

兄弟なのだろうか。

「キュティです。」

気付けば、キュティは名乗っていた。

人間は凶悪な生き物だと、知っていたのに。

「知ってるわ。」

「どうしてですか?」

桜は、キュティの涙を、指先で拭ってくれた。

「貴方の お母上――マリアさんを、知っているから。」

その言葉に、キュティは息を飲んだ。

桜と樹は、お母さんの知り合い?

「私達は、貴方と……世界を守りに来たの。」

桜は、哀しげに笑った。

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