天使の歌

「私と、世界を?」

反芻すると、桜は神妙な顔で頷いた。

「付いて来て?貴方に、大事な話を したいの。」

桜の言葉に、キュティは躊躇う。

本当に、桜と樹が、母の知り合いなのか、解らないからだ。

もし桜と樹が敵だったとして、2人だけなら逃げる事も可能だろうが、彼等に連れて行かれた先に、もっと大勢の人間が居たら、逃げる事は難しい。

考え込むキュティを見て、樹が人懐っこい笑みを浮かべた。

「キュティちゃん。俺等な、キュティちゃんの、兄弟なんだよ?」

「えっ!?」

驚いて樹を見つめると、彼は にっこりと笑った。

「俺等の父さんと、キュティちゃんの お母さん――マリアとの間に、俺等は生まれた。その後、マリアは此処――天界に来て、天使との間に、子を作った。」

「それが……私……。」

うん、と樹は頷く。

「俺等とキュティちゃんは、異父兄弟なんだよ。」

異父兄弟。

セティとスティの関係と同じ。

「だから、信じて欲しいな。」

樹の真剣な瞳に見つめられて、キュティは思い出す。

――信じる優しさと、疑う強さ。

セティに言われ、理解 出来なかった言葉。

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