天使の歌
好き
†
「……セティ。」
呼ばれて振り返ると、其処には最愛の人が居た。
「シーク。」
「セティ!大好きだよ!」
自分より頭1つ背が高い彼女に抱き締められて、俺も優しく彼女を抱き締め返した。
「俺も、好きだよ。」
「……素直で扱いやすい子ね。」
気付けば、腕の中に居るのは、怪しげな笑みを浮かべた悪魔。
恐怖で身を引こうとしたが、彼は俺を強く掴んで離さなかった。
「お前は、実験台だ。」
「……っ。」
何も、言えない。
何も、出来ない。
違う。
俺は実験台じゃない。
俺は――天使なんだ。
こんな、悪魔の躰なんて、力なんて、要らない。
俺の瞳から、涙が一筋、頬を伝って流れた。
†