天使の歌
「居たぞ!!」
聞き慣れた声が直ぐ後ろで聞こえて、俺は慌てて振り返った。
いつの間にかリーは、俺が隠れていた茂みを回り込んで、俺の後ろで仁王立ちしていた。
リーの言葉に、取り巻き4人が、わらわらと集まって来る。
砂糖に集る蟻みてェ。
思わず そう思って、俺は慌てて気を引き締めた。
そんな事 考えてる場合じゃない。
四方を ぐるっと囲まれてしまった。
これは……ヤバい。
「逃げんなよー、折角ぼっちの お前と遊んでやるって言ってんのに。」
「そいつは どうも。でも俺は、木の棒 振り回して ちゃんばら やるよりも、木陰で読書してる方が、楽しいんだ。」
出来るだけ ゆっくり答えて、こっそり辺りを見渡す。
……駄目だ。
完全に、逃げ道が無い。
「うるっせェな。遊んでやるって言ってんの!」
リーは簡単にキレると、俺の顔に向かって棒を振る。
父親に教わったように、見極めて、冷静に躱す。
しかし、取り巻き4人も攻撃して来た為に、全部を見極める事は出来ず、リーの棒は、あっさり俺の頭を殴った。
「っ!!」
歯を喰い縛って、悲鳴を押さえる。
声を出したら、負けだ。
リー達を、煽る事に なる。