天使の歌
「だって、貴方……こんなに苦しそうな目、してる。」
苦しい?
俺が?
「あたし、ほっとけないよ。それに……。」
彼女は視線を下に落とす。
その先に在るのは、枷で皮が擦り切れ、血が滲んでいる、俺の足首。
「貴方が嘘 付いてるとは、思えないから。」
にっこりと、少女は微笑んだ。
「あたし、シーク。貴方は?」
俺は、シークに恋を した。
両親を失って寂しかった事。
シークが美しかった事。
優しくしてくれた事。
彼女が俺の心の隙間を埋めてくれるような気がした。
だから、好きに なってしまったんだ。
それから、シークと旅を して、俺は都に辿り着いた。
その頃には、彼女と恋仲に なっていて、お互いの事を呼び捨てしていたし、タメ口だったし、婚約迄していた。
そんなに仲良くなっては いけなかったのに。
彼女と あんなに仲良くなって いなければ。
もっと、違った未来を、創れたんじゃないだろうか……。