天使の歌

「――っ!!」

俺は奥歯を噛み締めた。

俺だって、生きていて良い筈だ。

俺だって、存在してて良い筈だ。

何とかして逃げようと右手に神霊(みたま)を集めた瞬間。

「っ!!」

何故か感じた、浮遊感。

驚いて、息を吐き出してしまい。

それが泡に なるのが見えて、気が付いた。

宰相の邪力によって、水の神霊(みたま)に閉じ込められた、と。

手で鼻と口を覆って、俺は辺りを見回した。

直径2メートル程の水の玉の中に、閉じ込められていた。

水の玉の向こう側に、シークと宰相の姿が見える。

「……っ。」

苦しい。

早く此処から抜け出さなければ、息が保たない。

でも、どうすれば良い?

俺は焔の神霊(みたま)しか使えないから、水には不利だし、神力を使えば、躰が どうなるか解らない。

かと言って邪力も、相手を溶かすくらいしか出来ない。

「……ごぼっ……。」

苦しくて、苦しくて、息が口から漏れる。

必死に宰相の居る方迄 移動して、玉に右手を当てる。

そのまま邪力を使ってみたが、ばちばちと力に押し返されるだけだった。

「……っ……。」

もう、保たない。

肺から全ての空気が抜けて、俺は意識を手放した。

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