天使の歌

目を覚ますと、天界の都の独房と同じ、灰色の世界が広がっていた。

自由に なりたくて、
認めて貰いたくて。

必死に逃げて来たのに、結局 捕まってしまった。

その時。

足音が して、誰かが独房の前に立った。

冷たい瞳を持った、宰相。

「シークからの伝言を伝えてやろう。」

微かに、俺を馬鹿に したような響き。

ああ……聴きたくない。

耳を塞ぎたいのを我慢して、俺は ぼんやりと宰相を見た。

「素直で扱いやすい子で、やりやすかったわ。……そう伝えろと言われた。」

「…………。」

俺は遂に耐え切れなくなって、手で耳を塞いだ。

水で濡れた髪が、耳と手に貼り付く。

――もう何も、聴きたくない。

ずっと、強がって生きて来た。

一生懸命 生き続ければ、きっと良い事 在るよね、って自分に言い聞かせて、自分を騙して。

なのに、世界中の言葉が、俺の心を斬り刻む。

――大好きだよ。

――結婚して。

明るく、優しいシークの声が、脳裏に煌めく。

初めて恋を した。
初めて彼女が出来た。
初めて手を繋いだ。
初めてキスを した。
初めて他者に心を許した。

初めての事ばかりで、毎日が綺羅綺羅 輝いていて。

とても、幸せだったのに。

君の その言葉は。

嘘、だったんだね……。

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