天使の歌

それからの事は、良く覚えていない。

きっと、今迄で1番 辛い記憶だったんだろう。

だから俺は、心に鍵を掛けて、忘れてしまったんだと思う。

覚えているのは、実験台だと言われ、酷く苦しい事を、沢山されたと言う事だけ。

内容なんて、少しも覚えちゃいない。

兎に角 死にたかった事は、覚えている。

でも、やっぱり臆病な俺は、死ぬのが怖くて。

必死に、優しかった母親の記憶に縋り付いた。

きっと母さんが、天国から護ってくれたんだと思う。

気付けば、地界から天界へ、移動(ワープ)していた。

それから天使に見付かって、再びスティに追われる身に なってからは、ずっとマントとフードで姿を隠して。

生きている理由なんて、全然 解らなかったけど、俺は逃げ続けた。

そして、君が俺を、
見付けてくれた――。

最初は、俺の所為で村と居場所を失った人に、少しでも罪滅ぼしが したいだけだった。

でも、悪魔の血が暴走した俺を、最初は怖がったけど、受け入れてくれた。

それが とても嬉しくて。

傷付いても、俺みたいに笑顔を失わずに、他者を信じる純粋な所が、とても とても眩しくて。

君が好きに なっていた。

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