天使の歌
天使と悪魔
「な、んで……セティっ。」
セティからの神霊(みたま)が消えた瞬間。
堪え切れなくなって、キュティは その場に跪いた。
セティの過去は、見ていて辛かった。
奪われて、裏切られて、傷付けられて。
見ているだけで、辛くて、苦しくて。
でも、それよりも、哀しい。
胸が痛い。
「……私には、貴方しか居ないのに……!」
セティが最期迄 自分を護ろうとしている事が、こんなにも辛い。
例え、桜と樹が傍に居てくれても。
混血(ハーフ)のキュティを愛してくれるのは、混血(ハーフ)のセティだけなのだ。
「何で……もっと頼ってくれないの?私は、貴方が思ってるより ずっと……。」
腕に顔を埋めて泣くキュティの肩を、桜が抱いた。
「キュティちゃん……行くでしょう?」
「……え?」
キュティは涙に濡れた瞳で、桜を見つめた。
「彼が何を言おうと、行くでしょう?だって、愛してる人なんだから。」
桜の優しい笑みを見て、キュティは強く頷いた。
(泣いてる場合じゃないよね。)
「彼は本当は、貴方に会いたい筈よ。そうじゃなきゃ、貴方に送った神霊(みたま)に、“強がってた”なんて言葉、託す訳 無いもの。」
「はい。」
(セティ、待ってて。)
貴方はスティから、私を護ってくれた。
だから今度は。
私が貴方を、護るから。