天使の歌
「追え!!」
「逃がすなぁ!!」
キュティが暮らす村から少し離れた荒野に、荒っぽい男達の声が響いた。
男達は誰かを追い掛けている。
彼等の視線の先に居たのは、1人の少年だった。
グレーのマントで全身を覆い、フードも深く被っているので表情は窺えない。
長い間 逃げ続けているのか、苦しそうに呼吸を している。
「悪魔を殺せ!!」
男達のリーダーなのだろう、中心に居た50歳くらいの男が叫ぶ。
その時、今迄 逃げるだけだった少年が地面を蹴り、急にUターンして男達に飛び掛かった。
風でフードが取れ、顔が露になる。
輝く白銀の髪、左の揉み上げ辺りで三編みされた金髪、蒼い左瞳。
そして、ぐしゃっと言う嫌な音が響いた。
「うあああああぁぁっ!!!!」
数分の後、荒野に残ったのは、息を切らして立ち尽くす少年と――。
血塗れで、原形を留めていない、男達の死体だった。