天使の歌
セティの様子が おかしい事に気付いたのは、ラワールと言う町に着いた時だった。
いつもなら町の商店街で食料等の必需品を購入し、夕方に なってから宿を取るのに、町に着いた瞬間に、今日は もう宿で休むと、セティは言い出したのだ。
「どうしたの?何処か悪いの?」
驚いて訊くと、セティは いつもと同じ、柔らかい微笑を浮かべた。
「いや……ちょっと、疲れたんだ。」
「そう、なの?」
少し不審に思ったが、キュティは それ以上 何も訊かず、セティに付いて行った。
適当な宿を取り、荷物を下ろすと、セティはキュティに、銅貨が入った袋を渡した。
「それで、いつものように、必要な物を買って来てくれないか?悪いが俺は、先に休ませて貰う。」
「うん、解った。」
(全然 疲れてるように見えない。)
内心で、キュティは彼の態度を疑った。
(何だろ……1人で、考え事したい、とか?)
しかし、詮索するのは失礼だと思い、キュティは部屋を出て行った。