産まれる。

産まれる



言い合いになっている最中

彼女は急に苦しみ始め、倒れてしまった
恐らく陣痛だ。


俺は急いで救急車に連絡し

すぐに産婦人科に搬送され、分娩室へ通された。




「もう、産まれそうなんですか?」

医者に聞くと


「予定日より早めですが、今日中には産まれるかと」


「今日中・・・・」


俺は病院の時計に目をやる。


(15時18分か・・・)



俺は廊下の椅子に腰掛け

赤ん坊が産まれてくるのを、待つように指示された。



赤ん坊は障害があるため

帝王切開かもしれないとのこと。


実の父親ではない俺は、どうしたらいいか分からなかった。




椅子で腕組みし、思いのほか落ち着かないこの空間に
慣れようと必死だった。




そんな中、見知らぬスーツを着た男2人組が
俺の前に現れた。



「尾浜さん、尾浜良助さんですね?」

50代くらいであろう、男が俺に問いかけてきた。



「ええ、そうですが・・・」


「尾浜みゆさん、あなたの奥さんですね?」


「そうですけど・・・嫁の知り合いですか?」


「ああ、これは失敬。

警察の者です」






警察・・・?



全身が一気に凍りついた。


「嫁が、何か・・・したんですか?」



「山本 由里子さんは、ご存知ですよね」



「ええ、バイト先の同僚ですが・・・」



「彼女、山本さんね。



殺されました。」











「・・・・・・え?」










「あたなのお嫁さんが

殺したんですよ、山本さんを」







分娩室から

赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

高くて

うるさい

赤ん坊の泣き声。






俺は








何が起こっているのか





まったく




把握できずにいた。






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