産まれる。
「アナタ、赤ちゃん順調らしいわよ」
「・・・」
「ねぇ、そろそろ仕事・・・しない?」
「・・・出かけてくる」
「ちょっと、ちょっと・・・・アナタ!」
ガチャン。
重い扉が閉まる音がして
ボクは体をビクンと振るわせる。
パパ、お出かけしたのかな?
静まり返った空間の中
ママの体が微かに震えてるのが感じられた。
体の水分が吸い取られていく。
涙って言う水を、流しているママは
声を必死に抑えて震えてるんだ。
ボクも心臓の辺りが、すごく締め付けられるみたいで
すごく、苦しくなる。
「また・・・他の女の所・・・かしら・・・
酷い・・・酷い・・・・悔しい・・・・ムカツク・・・・ムカツク
ムカツク・・・・・ッ」
いつもの優しい声とは一転して
憎しみの篭った黒い声で
ママはつぶやく。
怖いよ
怖いよママ
パパがお出掛けすると、ママは怖くなる。
怖い声を出す。
怖い、怖いよ。
ボクはまだ小さい体をギュッと丸め込んだ。