紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
そんなことを思いながらボーッとしていると……
ブーッ。
ほとんど鳴ったことのない、呼び出しブザーが鳴った。
「なんや?」
オーランドは時計を見る。
まだ早朝だと思っていたけど、もう10時近かった。
(クライドたち……か?)
いや、彼らが来るときはあらかじめ連絡があるはず。
しかし、スマホにはなんの着信履歴もない。
日本にいたときは変な訪問販売だとか、新聞屋の勧誘が時々あった。
こっちが顔を出すと、外国人なものだから、彼らはひきつりながら、あっさり引いていった。
しかしこのアパートには、滅多にそんな人種はやってこない。
(……無視しとくか)
とオーランドが思った途端、またブーと呼び出しブザーが鳴る。
「うるさいわねえ」
とうとうコートニーも起き出した。
「コートニー、バスルームではよ着替え」
「はっ?なんで?」
「ええから、はよう」
オーランドはコートニーを服とともにバスルームに詰め込むと、自分も簡単に身なりを整えた。
……嫌な予感がする。
ブー。
3回目のチャイム。
オーランドはバスルームを気にしながら、のぞき穴から外を見た。
そこにいたのは、ごく普通の女性だった。
肩までの黒髪に、少し太めの眉毛。
やけに赤い口紅。
美人の部類ではあるが、知り合いではない。
誰だ?
オーランドは用心しながら、チェーンをかけたままにドアを、少しだけ開けた。
バスルームでは、コートニーが着替える音がごそごそとしている。