紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「気づいた時は、自分の家やった。
焼かれるような熱さは、もうなかった。
その代わり、コレが腕にはりついてたんや」
オーランドが右腕のタトゥーを服の上からさする。
コートニーは信じられないような顔で、ぱちぱちとまばたきをしていた。
「白魔法師が黒魔術を行うなんて、アホよ。
結局そのショックで、あなたのお父様は体が弱ってしまったのね」
コートニーは、一度だけ見たことのあるオーランドのよろよろした父の顔を思い出した。
「そう、足は取られんですんだんやけど、精霊の加護を失った。
騎士団にバレて捕まって拷問受けて、あの通りや」
だから、オーランドは父に逆らえない。
自分が生まれつき力があれば、父がああなることはなかったという負い目が、いつもある。
「で……召還してしまった悪魔は、どうしたの?」
「ああ……そう、あの洞窟で何が起こってるかわからんうちに、僕は……
あー、これ言ったら絶対驚くわー」
「驚いてやあげるから、早く言いなさいよ」
言ったら、もう僕に近づこうなんて思えないだろう。
少し寂しく思いながら、オーランドは口を開く。
「……どうやら、悪魔を食ってしまったらしいんや」
キョトン。
コートニーは、首をかしげた。
「悪魔を、食うって……」
「お父ちゃんの話やと、キレた僕が悪魔を吸収してしまったらしいねん」
「嘘でしょ!?
だからこの腕に、悪魔の魂が眠ってるって言うの!?
そんなこと、できるはずないわ。
あなたの魂がもつわけない。
人と悪魔のキメラが既にいるなんて、そんなのウソよ……」