紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
え?
どうしてそんな反応なんだろう。
怖いとか、気持ち悪いとか、そんな感情はないのだろうか。
不思議に思っていると、コートニーは背中からシドを下ろし、オーランドの鼻先につきつける。
「この子はシドよ。
私が生まれた時からそばにいる、小悪魔なの」
「おークマくん。シド・ヴィシャスと同じ名前なんて洒落てるやんけ」
シドは外なので、黙ってじっとしていた。
その黒い目だけが命を持ったように、キラキラ輝いていた。
「シド、本当にオーランドの中に悪魔がいるかわかる?」
コートニーが聞くと、シドは刺繍にしか見えない鼻を、ふんふんと揺らす。
やがて、小さくこくりとうなずいた。
「僕も信じられないけど、こいつの中には確かに魂が二つある。
ひとつは、悪魔のにおい。しかも結構な上級の。
うまく隠していやがったな」
小さなシドの声が、2人に届いた。
うまく隠しているのは、お互い様じゃないか。
そう思ったけど、今はツッコんでいる暇はない。
「普段はコレで抑えてんねん」
オーランドは騎士団が作ったアーマーリングをシドとコートニーに見せる。
「僕も騎士団に、ひどい拷問を受けたんや。
やけど、悪魔は身体から出ていってくれんかった」
オーランドは苦笑する。
「あきらめた騎士団は、僕を監視下に置くことで事を収めた。
人間でも悪魔でもない、正体不明の生き物。
それが僕が〈Unknown(アンノウン)〉と呼ばれる由縁や」
さあ、キミはどう思う?
僕は悪魔でも人間でもない、正体不明の生き物。
自分でも吐き気がするくらい、気持ち悪い生き物……。