紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
秘密のプリンセス
プリンセス・コートニー?
オーランドはコートニーを背後に隠しながら、その言葉の意味を考える。
「あなたは、昨日私の魔法陣に突っ込んできた子ね?
その金色の指輪、間違いないわ」
ナンシーは嬉しそうに、その黒い目をギラギラと妖しく輝かせた。
「ああ、確かに人と悪魔のにおいが一緒にする。
なんて素敵なんでしょう……」
うっとりとするナンシーから、後ずさりする二人。
「コートニー、本当は帰りたくないんやろ?」
「え……」
「震えてるやん」
オーランドは、背後のコートニーの手をにぎる。
コートニーはハッとオーランドの顔を見上げた。
「それは……そうだけど……」
「なら、出会ったときと同じように、素直にそう言ったらええやんか。
『私を連れて逃げて』って。
遠慮するなんて、キミらしくない」
キミはいつだって、素直にわがままを言えばいい。
「オーランド……」
「すきを見て逃げるで」
小声で言うその声に、コートニーが思わずうなずきかけたとき……
「逃げられるなんて思わないことね」
ナンシーが唇だけで、ニヤリと笑った。
その瞬間、オーランドとコートニーの足元に、魔法陣が現れた。
「な……っ!」
その魔法陣は、全てを黒く染め上げるような、闇の色をしていた。