紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


仲間に支えられながら歩き出したオーランドが、不意にふりむく。


そして、いつものように無邪気に笑った。


「何してるんや、行くで」


「え……」


「僕についてこい。」


さっきも言ったやろ、とオーランドは笑う。


それを彼の仲間たちが、苦々しげに見ていた。


(どうして……?)


どうして?


私は黒魔法師で、しかも古代から続く悪龍の子孫で、その王族の末裔で。


そんなふうに優しくされる理由なんかないのに。


……笑ってくれる、理由なんかないのに。


「罠だよ、コートニー」


シドが足元でこっそり言う。


そうかもしれない。

たぶん、そうだろう。


「……いいわ。どこに行ったって、私には地獄だけだもの」


きっとあの男は、自分の気配をつかんで、どこまでも追ってくる。


ならば敵陣に飛び込んでも、同じこと。


コートニーは、歩き出した。


オーランドの金髪だけを、頼りにして。





< 137 / 276 >

この作品をシェア

pagetop