紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「惚れてるかどうかは置いといて……なんで、黒魔法師やからってそこまで敵視すんねん。
あの子はそんなに、悪い子やない。
それに、お前ら忘れてるかもしれんけど、僕はヒトと悪魔のキメラやで。
本当は僕のことも、信用してないんちゃうか?」
そう言うと、ふたりの表情が固まる。
白魔術が使えないオーランドが、なぜ組織にいるか。
それは組織と騎士団では周知の事実だったが、同時に決して触れてはならないタブーでもあった。
「お前なあ、嫌なこと言うなよ」
クライドが首の後ろをかく。
「俺たちはお前のためを思って言ってるんだろ。
彼女の正体を知っていて騎士団に報告しなかったことがバレたら、ヤバいぜ?」
「そうだ。騎士団と組織があってこそのお前なんだから」
友人二人の真剣な表情に、オーランドは口を閉じる。
それはそうだ。
どんなにひどいことをされようと、騎士団が自分を保護し、監視下においてくれなかったら、どこの黒魔法師に拾われて、力を悪用されたかわからない。
もし自分が反旗を翻したりしたら……
騎士団は全力で、自分を討ち取りに来るだろう。
「とりあえず、あの女は騎士団に渡そう。
もしかしたらお前みたいに、なんとか力を抑える術を施して、それで済むかもしれないし」
クライドはオーランドのアーマーリングに視線を落とした。
たしかにこれは、騎士団が自分の悪魔の力を抑え込むために作ったもの。
(でも、お前らは知らんのや)
その指輪を与えられるまで、自分が騎士団に受けた仕打ちを……。