紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
……かたん。
小さな物音がして、オーランドは目を覚ました。
仲間たちは気付かずに寝ている。
アリスかコートニーが起きたんだろうか?
ぼんやりする頭で、ベッドの中でごろごろしていると……
かちゃん。
(え?)
まさかと思ったが、玄関が開くような音がして、オーランドは飛び起きた。
そして音を立てないよう、そちらに向かう。
すると、今まさに外に出て行こうとしたコートニーとシドを発見した。
「何してんねん」
「……!」
コートニーは振り返り、バツの悪そうな顔をした。
昼に見た黒髪も赤紫の目も今はなく、出会ったときのブラウンにまた変化していた。
「散歩」
コートニーは小さな声で短く言う。
「……つきあうわ」
オーランドは物音を立てないように細心の注意を払い、コートニーと自分の体をドアの外にだした。
そして向かったのは、アリスのアパートの屋根の上だった。
夜空には月がぽっかりと浮かび、冷たい風が吹いている。
寄り添えばあたたかいかもしれないけど、二人の間には不自然な隙間があった。
「どうしたんや、こんな夜に散歩なんて、出会ったとき以来やないか」
ちゃかして言うと、コートニーはせっかくの恵まれた顔を真っ赤にして怒った。
「だって、あの女と同じ部屋でなんて、眠れないんだもん!」
あの女……アリスのことか。
「何言われたんや?」
「言いたくない。思い出したくもないわ!」
コートニーは膝を抱えて、そこに額をつけてしまった。