紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
どうしてそうなるんだろう。
こんなにあからさまに、コートニーの味方をしているつもりなのに。
「……それはない」
答えると、コートニーの表情が一瞬、ほわりとほころぶ。
しかし次の瞬間には、つんと口をとがらせた。
「ふうん。別にあなたが誰を好きだって、構わないんだけどねっ」
なんというツンデレ。
たくさんの女の子と接した経験のある自分としては、コートニーは決して自分のことを嫌っていないと思うのに。
むしろ、過去の話をすんなり受け止めてくれたのは彼女が初めてで、少し脈があると思ったんだけど……。
「……ホンマに、構わないんか?
僕が、他の女の子を好きでも」
コートニーの目を覗き込むと、彼女は口を閉ざす。
目を丸くして、自分を見返す。
「僕は、あのプリンスさんが『僕の可愛いコートニー』って言うたび、腹が立ったけど」
「え……」
「僕よりイケメンやったしな。
もしかしてコートニーは、彼が好きなんか?
彼の気を引きたいがために、家出してきたとか?」
「ばっ、馬鹿なこと言わないで!」
冗談を真に受けたコートニーは、真っ赤になって怒った。
「彼はね、私とはルーツは同じだけど、血は繋がってない。
だけどそんな、彼が好きだなんてこと、ありえないわ!」
ああ、そうなのか。
もとは一つだった王族も、年月を経て分離してしまったわけだ。
特徴が似ているから、もしかしたら親戚かもと思ったんだけど……
冷静に分析している自分をにらむコートニーの目線に気付き、ほほ笑む。
「そうなんか。なら、よかった」
「な、何が良かったのよ。
さっきから、腹が立ったとか、よかったとか、からかってるの?」