紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
オーランドは首を横にふる。
「からかってへんよ。
そういえば彼……プリンスは、なんていう名前なん?」
真正面から向き合うのに照れて、話をそらす。
「彼はカート」
「カートくんか。彼が、今の黒魔法師のトップなわけやな」
「そうよ」
コートニーはうなずく。
「彼は私と違って、物心ついたときから自分が王族であることを自覚していたみたい。
亡くなった両親に、白魔法師への復讐をとげるように言われ続けてきたんですって」
「ほお……」
「彼の一族はずっと恨みを忘れずに、力の強い王子が産まれるのを待っていた。
そして20年前に産まれたのが、カートよ。
彼は産まれた瞬間から強い守護悪魔がついていたんですって。
ご両親の心血注いだ愛情と教育で、あの時代遅れの王子様は育ったってわけ」
時代遅れの王子様。たしかにそんな感じだ。
言葉も身のこなしも優雅で、産まれながらの高貴(黒魔法師にとっては)な血筋を感じさせる。
その表情には、自身が満ち溢れていた。
「キミは、どんな生活を?」
コートニーに聞けば、彼女は雲に覆われて何も見えない夜空を見上げた。
「私は、スコットランドのはじっこで、おばあさまに育てられたわ。
両親の顔は知らないの。
父親は普通の人で、魔女だった母は、私をひとりでこっそり産んで、そのあとまた別の男にうつつを抜かして、出て行っちゃったみたい」