紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
オーランドは目の前に、自分の右手のアーマーリングをかざす。
「カートやナンシーの魔力にはめっちゃ反応するのに、キミには全然、おとなしいもんや。
この中の悪魔、キミの前ではいい顔したいんちゃうかな」
「それは、私の力が弱いから……」
「そうかな。僕はちゃうと思うねん。
僕は何故か最初から、キミに逆らえんかった。
生活苦に陥ろうと、仲間に責められようと」
そう、最初から。
逆らえなかったし、放っておけなかった。
「…………」
コートニーの手をそっと離すと、オーランドはアーマーリングを外した。
それでも、腕の悪魔は暴れない。
それは、たぶん。
「悪魔が、キミの中のプリンセスの血を認めとるんや。
キミとなら、契約してもいいと」
「契約……」
「黒魔法師は、悪魔と契約して、黒魔術を行うんやろ?
その代償は?」
「生き物の血や、肉……。
シドは何故か、お魚しか食べないけど」
黒魔法師は悪魔に、いけにえの人間や家畜をささげ、魔法を使ってきた。
そのことは、オーランドも知っている。
「僕にも代償をくれたら、キミの力になってやる」
言葉の意味がわからず、コートニーは首をかしげる。
その手首を、オーランドがとらえた。
そして。
その手の甲に、一瞬だけキスを落とした。
「……これでええわ」
オーランドは顔を上げると、まばゆい金髪の間からのぞくブルーの瞳で、にこりと笑った。