紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


オーランドは目の前に、自分の右手のアーマーリングをかざす。


「カートやナンシーの魔力にはめっちゃ反応するのに、キミには全然、おとなしいもんや。

この中の悪魔、キミの前ではいい顔したいんちゃうかな」


「それは、私の力が弱いから……」


「そうかな。僕はちゃうと思うねん。

僕は何故か最初から、キミに逆らえんかった。

生活苦に陥ろうと、仲間に責められようと」


そう、最初から。


逆らえなかったし、放っておけなかった。


「…………」


コートニーの手をそっと離すと、オーランドはアーマーリングを外した。


それでも、腕の悪魔は暴れない。


それは、たぶん。


「悪魔が、キミの中のプリンセスの血を認めとるんや。

キミとなら、契約してもいいと」


「契約……」


「黒魔法師は、悪魔と契約して、黒魔術を行うんやろ?

その代償は?」


「生き物の血や、肉……。

シドは何故か、お魚しか食べないけど」


黒魔法師は悪魔に、いけにえの人間や家畜をささげ、魔法を使ってきた。


そのことは、オーランドも知っている。


「僕にも代償をくれたら、キミの力になってやる」


言葉の意味がわからず、コートニーは首をかしげる。


その手首を、オーランドがとらえた。


そして。


その手の甲に、一瞬だけキスを落とした。


「……これでええわ」


オーランドは顔を上げると、まばゆい金髪の間からのぞくブルーの瞳で、にこりと笑った。





< 148 / 276 >

この作品をシェア

pagetop