紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「な、な、な……っ!」
コートニーは一瞬で顔から首まで真っ赤になり、思わず黒髪にマゼンタの瞳の、元の姿に戻ってしまう。
それを見て、オーランドはますます目を細めて、笑った。
「うん、キミはそっちの本物の方がキレイや」
「どどどどどうしたの、あなた」
「ああごめん、手の甲は嫌なんやったな」
「そそそそそうじゃなくて!」
泣きそうな顔のコートニー。
ああ本当に、そういう初心な反応が可愛い。
そんなにキレイなのに、どうして自分を恥じるのだろう?
「……僕、単純やから。
この腕のタトゥーの秘密を知っても、怖がらないで、思いやってくれる。
そんなキミの力になりたい。
悪魔は悪魔らしく、プリンセスのしもべになったるわ」
素直に言うと、コートニーは真っ赤なまま、目をまんまるくした。
突然のことに、驚いているらしい。
少し沈黙したあと、彼女は首を横にふる。
「ダメよ、しもべなんて。
私はあなたをしもべだとも、悪魔だとも、思えない」
彼女は潤んだ瞳でにこりと笑った。
優位に立っているはずの自分の胸が、どきりと跳ねる。
「ただのオーランドとして、そばにいて」
赤みのさした頬、バラ色の唇。
これは、魔力?
オーランドは引き寄せられるように、彼女の細い肩を抱く。
そのまま顔を寄せて、目を閉じる余裕すらなかったコートニーのバラ色の唇を、そっと奪った。
「……そんな殺し文句、ナシやろ……」
そんなキミだから、放っておけない。離せない。
コートニーは恥ずかしさのせいか、オーランドの胸に顔をうずめ、一向に上げようとしなかった。
そしてそこで静かに、泣いているようだった。