紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「な、な、な……っ!」


コートニーは一瞬で顔から首まで真っ赤になり、思わず黒髪にマゼンタの瞳の、元の姿に戻ってしまう。


それを見て、オーランドはますます目を細めて、笑った。


「うん、キミはそっちの本物の方がキレイや」


「どどどどどうしたの、あなた」


「ああごめん、手の甲は嫌なんやったな」


「そそそそそうじゃなくて!」


泣きそうな顔のコートニー。


ああ本当に、そういう初心な反応が可愛い。


そんなにキレイなのに、どうして自分を恥じるのだろう?


「……僕、単純やから。

この腕のタトゥーの秘密を知っても、怖がらないで、思いやってくれる。

そんなキミの力になりたい。

悪魔は悪魔らしく、プリンセスのしもべになったるわ」


素直に言うと、コートニーは真っ赤なまま、目をまんまるくした。


突然のことに、驚いているらしい。


少し沈黙したあと、彼女は首を横にふる。


「ダメよ、しもべなんて。

私はあなたをしもべだとも、悪魔だとも、思えない」


彼女は潤んだ瞳でにこりと笑った。


優位に立っているはずの自分の胸が、どきりと跳ねる。


「ただのオーランドとして、そばにいて」


赤みのさした頬、バラ色の唇。


これは、魔力?


オーランドは引き寄せられるように、彼女の細い肩を抱く。


そのまま顔を寄せて、目を閉じる余裕すらなかったコートニーのバラ色の唇を、そっと奪った。



「……そんな殺し文句、ナシやろ……」


そんなキミだから、放っておけない。離せない。


コートニーは恥ずかしさのせいか、オーランドの胸に顔をうずめ、一向に上げようとしなかった。


そしてそこで静かに、泣いているようだった。




< 149 / 276 >

この作品をシェア

pagetop