紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
泣かせてしまった。
いきなりキスをしたから?
いや、きっと違う。
たぶん彼女が泣いているのは、この恋の行く末を思うから。
自分たちが、越えてはいけない線を飛び越えてしまったのがわかるから。
プリンセス、Unknownと呼ばれ、追われる僕たちに、幸せな未来はある?
逃げ切れる保証も、何もないのに……。
わかっていたから、いつの間にか産まれていた気持ちに気づかないふりをしてきた。
コートニーの気持ちにもどこかで気付いていたのに、知らないふりをしていた。
だって、一度そのぬくもりを知ってしまったならば、この世に未練が残ってしまうじゃないか。
いつ死んだって後悔しないように、なるべく毎日を楽しく、笑ってすごすように心掛けてきたのに。
すべてが、水の泡だ。
もう、気付いてしまった孤独は、わがままでとびきり優しいキミ以外では、きっと埋められない。
「……ごめんな、プリンセスなんて、二度と言わんわ。
キミは、ただのコートニーや……」
心を寄り添わせるように、オーランドは強くコートニーを抱きしめる。
キミの心も体も、救ってやることはできないだろうけど、せめて。
自分だけは、キミをただのキミとして、抱きしめよう。
キミの孤独やあきらめを共有できるのは、自分だけ。
きっと、最初からそう気付いていたから、放っておけなかった。
きっと最初から……。
──さあ、どこへ逃げようか。
キミと二人、手をつないでどこまでも行こう。
例え、僕らの先に待ち受けるものが、
絶望だけだったとしても。