紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
◇逃避行
決別
夜明けを待たず、二人はアリスのアパートからそっと離れた。
行く先は、オーランドのアパート。
敵にも味方にも見つかる可能性は高いが、逃げるにはそれなりの準備が必要だ。
ナンシーがたずねてきたとき、カギを開けっぱなしにしてきてしまったが、アパートは荒らされず、無事な状態だった。
オーランドは財布とパスポートだけを持ち、コートニーにTシャツとカーディガンを与える。
彼女はそれに着替え、スカートの下のパ二エを脱ぎ捨てた。
ボリュームを失ったそれは、ただの黒いスカートと化す。
中途半端な長さになってしまったそれを、コートニーは惜しげもなく、ハサミで切り裂いた。
わざとすその糸を出し、オーランドのTシャツのすそから少しのぞく程度の長さにそろえる。
ブラウンの巻き毛を後頭部で一つにしばり、首や耳をさらけだした彼女は、すでに立派なパンク少女へと変貌を遂げていた。
「カートに与えられたもので、唯一この服装だけは好きだったわ」
コートニーは脱ぎ捨てたコルセットやパ二エをながめる。
なるほど、あの王子様の趣味だったのか。
オーランドは妙に納得した。
「でも、こっちの方がラクね」
「うん、僕はこっちの方が好きやな。
きれいな足が、しっかり見えるし」
「まあね、足がキレイなのは否定しないわ」
コートニーはいつもの調子に戻り、不敵に笑った。
(……照れるコートニー、もう少し見たかったんやけどな)
どうやら、まだ自分は女たらしとして未熟なようだ。
オーランドは苦笑し、コートニーを部屋の外へ連れ出した。