紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
男は苦笑し、
「僕はオーランド」
と、名前だけを名乗った。
「……私は、コートニー」
コートニーは名乗り返す。
「ほんならコートニー、今日はもう遅いから、送っていこか」
「どこへ?」
「どこへって、キミの家に決まってるやんか」
話は明日でもできるしな、と笑ったオーランドを、コートニーは泣きそうな顔で見上げた。
「……ないわ」
「ん?」
「帰る場所なんか、ないの」
「…………」
うつむいたコートニーを見て、オーランドは迷う。
さて、どうするべきか。
家出少女なら警察に送るべきだが、色々聞かれたら面倒だ。
父の組織には、自分が帰りたくない。
(騎士団に丸投げするんが、一番手っ取り早そうやな)
警察にも勝る権力を持つ彼らなら、さっさとなんとかしてくれるだろう。
なんだかんだ言って、市民の味方を気取っているわけだし。
そう思ってコートニーの顔を上げようと、優しく肩を叩く。
ゆっくり顔をあげたコートニーの顔が、月明かりに照らされた。