紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
強大な力が、二人の周りに渦を巻く。
そしてオーランドの右腕は、肘まで変色していた。
まるで、血の色のような、紅蓮に……。
それはオーランドの怒りの色に似ていた。
「一度にいけ!油断するな!」
白魔法師たちも、それぞれの精霊に力を送る。
オーランドは右腕を、目の前に突き出す。
激しい戦いが始まると思われた、そのとき。
「……っ……!?」
突然腕に痛みを感じ、オーランドがうめく。
紅蓮に染まった右腕は、またぼこりぼこりと、形を変えようとしていた。
「あかん!こんなときに……!
力は使わせてやるから、痛いのはあかんて!」
オーランドは右腕のタトゥーに向かい、話しかける。
しかし悪魔から返事はない。
皮膚が内側から引き裂かれるような痛みに、額から汗が落ちる。
前髪からそれが垂れるのを防ごうとし、首をふった彼は、見た。
視界の端に、白魔法師の影のようにしてひっそりとたたずむ、黒豹がいるのを……。
「カート…!」
オーランドのつぶやきに反応したのは、コートニー。
彼女が顔を上げた時には、もう黒豹はいなかった。
油断した途端、魔法陣は消える。
一瞬無防備になった二人を、白魔法師たちの攻撃が襲った。