紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
lose control
全身を鈍い痛みにとらわれたまま、オーランドは目を覚ました。
「……って……」
湿り気を帯びているけれど、清浄な空気。
冷たく灰色の壁、天井、床。
ドアは白魔法で、強固に閉ざされている。
誰にも尋ねなくても、わかった。
ここは過去に、ずっと捕われていた場所。騎士団が、幼い自分を拷問した部屋だ。
「趣味が悪すぎるわ……」
首から、手首から、両ひざに、白魔法を施した鎖でつながれている。
行き過ぎたパンクファッションのようなそれは、オーランドに苦痛を与え続ける。
「ちくしょう、なんやっちゅうねん!」
ここにはもちろん、コートニーはいない。
無防備な自分たちを白魔法師たちが傷つけ、捕え、別々の部屋に放り込んだのだ。
オーランドはいらだち、力任せに床を踏みつける。
あのとき右腕がいうことを聞かなくなってしまったのは、明らかにカートの影響。
あの黒豹さえ現れなければ、コートニーを連れて逃げられたかもしれないのに。
どうしてだ?
コートニーが捕まれば、カートだって都合は良くないはず。
考えても、理由はわからない。
ただはっきりしているのは、このままでは自分もコートニーも命が危ういということ。