紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
そうだった。
コートニー自身には、ほとんど力がない。
脅威なのは、あのペンタグラム。そして、彼女の血だ。
「なんでやねん……」
コートニーの顔を思い出せば、怒りより悲しみがこみ上げた。
僕たちは、ただ生まれただけ。
なのにどうして、こんな仕打ちを受けなければならない?
何も欲しくなんかなかった。
特別な力も、なにも。
自分のことを憎むしかできなくて、寂しくて苦しくて、しょうがなかった。
でも、やっと見つけたんだ。
ありのままのお互いを、想いあえる人を。
「なんでやねん!なあクライド!
神様なんかおらん!
天使も悪魔も、人間が作りだしたもんや!
なんでそんなもんに派閥があって、争わなあかんねん!
傷つけられなあかんねん!」
悔しかった。
自分はこんなにも無力で。
ただ、素の自分にそばにいてほしいと願ってくれた少女を、助けることもできない。
のどが熱くて、涙がこぼれそうだった。
そのとき、扉の向こうから押し殺した声が聞こえた。
「俺もそう思うよ、オーランド」
「……クライド……」
「ごめんな。俺は本当に、お前の友達だったのかな。
どこかで悪魔が憑いているお前のことを恐れていたし、疑ってもいた」
わかっていた。
クライドもフェイも、アリスも。
協力しながらも、自分の力を信用していないことは。
「でもさ、お前だってお互い様だぜ。
お前はずっと、俺たちを受け入れようとはしなかった。
いつも笑顔でも、心には鉄壁の防御がしてあって、誰も入れようとはしなかったよな」