紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
クライドの声が、寂しそうに響く。
見抜かれていた。
その事実に、オーランドはしばし唖然とする。
裏切られるのが嫌だから、誰にも心を許せなかったのを……彼らはわかっていたんだ。
「今回のことで、ようやくお前の素顔を見られた気がするぜ。
好きな女のために怒るお前は、正直ナイスガイだ」
「……何言うてんねん。僕はいつだってナイスガイやないかい」
扉の向こうから、苦笑が聞こえた。
「じゃあナイスガイ、もっと俺に素のお前を見せてくれよ」
その言葉のあと、扉の魔法陣が消える。
クライドが、魔法を解除してくれたのだ。
扉から身を滑り込ませたクライドは、オーランドの鎖を解除していく。
「彼女はこのあとすぐ、城の前の広場で処刑される。
絶対に助けろよ。そして、逃げきれ。
俺ができるのは、ここまでだ」
「クライド……お前は大丈夫なんか?こんなことして……」
「気にするな。餞別だ」
クライドはニッと笑うと、オーランドの背中を押した。
オーランドは少し迷う。
このことがばれたら、きっとクライドもただではすまない。
でも……きっとそれだけの覚悟をして、彼は彼なりの友情を示してくれたのだ。
「おおきに!」
オーランドは笑顔を作り、クライドに手を振った。
もう二度と会えないだろうが、寂しいと思っている時間はない。
オーランドは走った。
ただ、小さな手の彼女を想って。