紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


クライドの声が、寂しそうに響く。


見抜かれていた。


その事実に、オーランドはしばし唖然とする。


裏切られるのが嫌だから、誰にも心を許せなかったのを……彼らはわかっていたんだ。


「今回のことで、ようやくお前の素顔を見られた気がするぜ。

好きな女のために怒るお前は、正直ナイスガイだ」


「……何言うてんねん。僕はいつだってナイスガイやないかい」


扉の向こうから、苦笑が聞こえた。


「じゃあナイスガイ、もっと俺に素のお前を見せてくれよ」


その言葉のあと、扉の魔法陣が消える。


クライドが、魔法を解除してくれたのだ。


扉から身を滑り込ませたクライドは、オーランドの鎖を解除していく。


「彼女はこのあとすぐ、城の前の広場で処刑される。

絶対に助けろよ。そして、逃げきれ。

俺ができるのは、ここまでだ」


「クライド……お前は大丈夫なんか?こんなことして……」


「気にするな。餞別だ」


クライドはニッと笑うと、オーランドの背中を押した。


オーランドは少し迷う。


このことがばれたら、きっとクライドもただではすまない。


でも……きっとそれだけの覚悟をして、彼は彼なりの友情を示してくれたのだ。


「おおきに!」


オーランドは笑顔を作り、クライドに手を振った。


もう二度と会えないだろうが、寂しいと思っている時間はない。


オーランドは走った。


ただ、小さな手の彼女を想って。








< 178 / 276 >

この作品をシェア

pagetop