紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「カート様、いいのですか?」
ナンシーが美貌のプリンスに問う。
彼らは何十フィートも離れた木の上から、コートニーの処刑の準備がされるのを眺めていた。
「ふん、魔女を処刑するのに火あぶりとは、白魔法師も昔のまま変わっていないね」
十字に組まれた丸太の下に、枯れ枝や木材が並べられるのを見て、カートは見下したように鼻を鳴らす。
あたりはすでに日が暮れて闇に包まれており、その漆黒の髪と同化する。
「カート様……」
「まあ、しょうがないよね。キメラは代わりが作れる。
灰さえ手に入れば、プリンセスを死者として復活させることもできる。
問題は、ペンタグラムだ。あれの代わりは、世界に二つとない」
ナンシーは黙って、主人の命令を聞く。
「プリンセスの処刑にはここにいる白魔法師の全員が立ち会うだろう。
スカスカになった城の中からペンタグラムを奪うのが先だな」
もちろん、プリンセスが生きて戻れればそれが一番良いのだけど。
カートはそう言い、木の上から地上に舞い降りる。
黒豹がそのあとを追った。
あのとき、オーランドの腕に魔力を送ったのは、まだペンタグラムの存在に気づいていなかった白魔法師に、それを破壊されると困るからだ。
あのまま巨大な力が全面衝突すれば、ペンタグラムはコートニーと一緒に粉々になってしまっただろう。
捕縛だけで済めば、ペンタグラムを敵の手から遠ざけることができるかもしれない。
カートの目論見は当たっていた。
捕われたコートニーからペンタグラムが奪われ、あの髭の団長の手に渡ったのを、彼は見ていた。