紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
つかの間の安らぎ
「まさか君が、自分から来てくれるとは」
カートは目の前に現れたコートニーに微笑みかける。
「……だけど、夫になる僕以外の男と口づけはいただけないな」
「誰が誰の夫になるですって?
私は彼が好きなの!」
「ふうん。その割には、君は清らかなままだね。
昨晩は一緒に眠ったみたいなのに」
意地悪く笑うカートに、みるみる赤くなるコートニー。
「の、のぞきなんて趣味が悪いわ!
最低よっ!」
いやいや、そこじゃないやろ。
のぞかれていたとかじゃなくて、僕たちの動向が筒抜けなんがヤバいんやって。
カートの力が予想以上に強いものだとさとり、オーランドは警戒を強める。
「右腕がおとなしくなったね。
君の力なのか、プリンセスの力なのか……まあどっちでもいいけど、君たちは何をどうしたいのかな?」
余裕の笑みを浮かべたまま、カートは二人に問う。
「もちろん、お前を倒して、コートニーを自由にするんや!」
これ以上の会話は無用とばかり、オーランドはカートに殴りかかる。
紅蓮の腕は戦いの喜びに震え、膨大なオーラを吐き出した。
オーラは巨大な腕の形に変わり、カートを飲み込む。
「プリンス!」
ナンシーが叫び、自分の魔法陣を呼び出そうとする。
くだけたピアスは、元通りに復元されていた。