紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
カートが怒鳴ると、黒豹が闇夜に吠える。
黒い煙はそれに集まり、黒豹を巨大に膨れ上がらせた。
「げっ!」
バルコニーいっぱいに膨れ上がった黒豹は、その金色の目でオーランドをにらみ、鋭い牙で彼をかみ砕こうと口を開ける。
がちり、と歯が鳴る直前に、オーランドは黒豹のあごの下にすべりこんだ。
「おとなしくせえっ!」
両手を上にかざし、黒豹ののどへオーラを打ち込む。
ぐわり、と黒い体が揺れた。しかし……
──ぺいっ!
「うおわっ!」
体の横から、強烈な猫パンチが飛んできて、慌てて転がり逃げる。
「なんちゅう巨大な肉球……!」
あれをモフモフしたら、気持ちいいかもしれない。
しかしその前に、鋭い爪にやられて死んでしまう。
「狙うなら頭か!」
オーランドは黒豹の体の下を駆け抜け、しっぽに向かって跳躍し、背中に上ろうとする。
しかし、その途中で、黒い煙がぼわりぼわりと、彼にむかって飛んできた。
カートの攻撃だ。
「ちょ、どっちかにせえよ!悪いやっちゃな!」
しかも、めっちゃ笑てるし。
絶対、どついたらなあかんわ。
オーランドは振り下ろされるしっぽを避けながら、カートに向かおうか、黒豹を先に片付けるか、一瞬迷った。
その瞬間。