紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
【騎士団】は、この世界の白魔法師の全てを束ねる機関であり、
オーランドの父がリーダーを勤める組織の管理者でもある。
白魔法師とは、精霊の力を借りた魔法を使う者たちのこと。
オーランドの父もまた白魔法師であり、いわば騎士団の子会社のような組織のリーダーだ。
騎士団の命令を受け、この国の治安を維持するのが彼らの役目。
古代からひっそりと生き続けてきた悪魔やモンスターが悪さをするのを防ぐのが、その主な活動だ。
日本で出会った陰陽師と、立場は似ている。
ならばそれを正直に話せば良かったのだが……
騎士団は、自分たちの素性を一切明かさずに夢見姫を本国に連れて帰れとオーランドに指示していた。
「……なぜ、さっさと奪ってこなかった」
テーブルの対極に座っていた男が口を開く。
今はこの部屋には彼……騎士団の団長であるランスロットしかいない。
それでもオーランドにのしかかる威圧感は大変なものである。
「奪うってもですね、飛行機にムリヤリ女の子乗せようとしたら、そこで捕まりますやんか。
俺は移動魔法も催眠術も使えへんのやから。
したら、彼女の承諾を得た方が、すんなり出国できると思いまして」
「……で?」
ランスロットの黒いくせ毛の下の太い眉毛が、ぴくぴくと動いた。