紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「待てコラぁぁぁぁっ!」
がぶりと噛みついてこようとした黒豹の牙を避け、その額に飛び乗る。
魔法陣を呼び出し、コートニーを連れて行こうとするカートとナンシーに、オーランドはありったけの力をぶつけた。
「……!」
カートが魔法陣で、それを防ぐ。
そのすきに、オーランドは攻撃の間近にいたコートニーの腕をぐいと引き寄せた。
「あああああ、危ないじゃないのっ!」
危うく巻き添えを食らうところだったコートニーは、涙目で訴える。
「ごめん、ゆる……」
許せ、と言い切る前に、オーランドは口を閉ざした。
二人は同時に、向かい合っていた顔を横へ向ける。
強大なおそろしい力を、そこに感じて……。
「い、いやぁぁぁぁ~っ‼」
コートニーが叫んだ。
目の前では、黒豹が涎を垂らし、二人を飲み込もうと口を開けていた。
「僕をかなり怒らせたね……?」
黒豹の背後では、お気に入りのジャケットを傷つけられたカートが、血のしたたる手首を抑えていた。
しかし、彼らには見えていなかった。
「あかん~!」
オーランドはコートニーを抱え、全力疾走。
背後から、鋭い爪を光らせた猫パンチが飛んできた。
その速度は、今までとは比較にならない。
コートニーを抱えて避け切り、攻撃までするのは無理だ。