紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


悪魔が代償を欲しがっているだけには見えなかった。


自分を見つめているのは、本当にただの、優しく美しい男の子で。


「なあ……やっぱり、怖い?」


ちゃんと聞いてくれる彼に、嘘をつくこともできなくて。


「うん」


うなずいたら、笑われる。


「あはは、素直でよろし。

……ごめんな、こんなときに」


謝られたら、泣きそうになった。


約束を破ろうとしているのは、私の方なのに。


……こんなに怖いのは、いったいどうして?


「あなたが、怖いんじゃないの」


唇が震えた。


涙が、こぼれる。


「あなたのことをたくさん知って、別れなければいけなくなる日が怖いの」


オーランドの瞳から、笑いが消えた。


「好きよ。大好きなの。

本当なら、あなたの好きにしていい体だわ。

だけど、これ以上の幸せを知ったら、別れがつらくなる」


あとからあとから、涙があふれた。


なんで私は、こうもわがままなんだろう。


オーランドは無言で、抱きしめてくれる。


「なんで?なんでそんなに優しいの?

私はあなたから、全部……

家族も友達も、全部を引きはがしてしまったのよ?」


一度吐き出したら、止まらなくなる。


「それは、僕が決めたことや。

キミのせいじゃない」


「だけど」


「なあ、コートニー」




















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