紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
オーランドの指が、優しく頬の涙をぬぐう。
「僕は、キミがそばにおってくれたら、それだけでええよ」
「…………」
「他にはなんもいらん。
ただ、本当の僕だけを見てくれるキミさえおってくれれば、僕は幸せや。
たとえそこが戦場だろうと、二度と出られない樹海だろうと」
……なんでそんなことが、真顔で言えるの?
オーランドの甘い声が、心の武装を解除していく。
涙が止まった頬に、彼はキスをした。
「なあ、コートニーは……そうじゃないんかな。
たくさんの友達がほしい?
優しい家族がほしい?」
今まで、たくさんの大切なものを奪われた。
だから、失うことにひどく臆病になっている自分に気づく。
「……いらない。偽物なら、いらないわ」
全部がまやかしのようなこの世界。
たったひとつでも、本物があればいい。
「あなたがいればいい」
するりと落ちたのは、きっと自分の真実。
失うのは怖い。
だけど生きていれば、結局はいつか、私もあなたも土に還るのだから。
今、生きているうちに、大切にしなくちゃ……。
「……そういうこっちゃ。
僕らの時間は短いで。
いちいち難しく考えて泣くのは、時間のムダや」
オーランドは笑って、コートニーの頭をなでた。
「別れの日なんて寂しいこと、言わんといてくれよ。
ずっと、僕の隣におったらええんや。
余計なこと考える暇がないくらい、僕が愛したるから!
それでええやろ?」
天使のような笑顔に、甘すぎるセリフ。
思わずうなずいてしまうコートニー。
私、幸せかも。
「うん……」
……ん?ちょっと待って?
なんで、いつの間にあなた、私の上にいるわけ?
そんなプロポーズまがいのセリフを吐いておきながら。
「誘導したわね!?この、軽薄男!」
「はは、先に離れるなって言ったんはコートニーやで?」
「あ、あれはあなたが我を忘れて一人で突っ込んでいこうとしたからでしょ!?」