紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
誓い
*
幾多の目が、自分を見ている。
様々な色のそれたちは、白魔法師であったり、一般人であったものたちの眼球。
液体につかり、なんの意志もなくこちらを見つめている。
カートはそんなことは気にしない。
コートニーが逃亡してから手に入れた、千里眼の力を持った黒水晶さえ、見向きもしない。
彼の視線を独り占めしているのは、コートニーの一族……もとは自分の一族と同じだった、王族に伝わるペンタグラム。
12歳のコートニーからこれを奪ったとき、自分は17歳だった。
それからたった一人の味方ともいえるナンシーと、様々な研究をしてきた。
死んだ人間を、日光にも炎にも負けないリビングデッドにする方法。
王族の血を増やすための、コートニーを悪魔とのキメラにする方法。
だって、普通にキミと交尾するだけじゃ、残せる王族の血はほんのわずかだし、弱い人間のままじゃないか。
悪魔の力を手に入れたキミと、僕の子。
それを錬金術を使い、もっともっと殖やしていかなきゃ、王国は復興しても、維持していけないだろ?
そう言ったら、彼女は顔をひきつらせていた。
どうしてだろう、とカートは思う。
長い年月、白魔法師に良い思いをさせてやったじゃないか。
今度は、僕たちがこの世界を支配する番だ。