紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
どれだけの間、この日を待ちわびただろう。
黒魔法師の王族として彼らが発見されてしまい、残酷に処断されたのは、もうずっと昔のこと。
カートは12歳。連れ去られたときのコートニーと同じ年だった。
それから、少しだけ残っていた家人と従者を連れて、逃亡の旅を続けるしかなかった。
ナンシーもそのうちのひとり。
行く先々で、白魔法師たちは自分の前に立ちはだかった。
そうして、王子である自分を守り、身内の人間たちは、次々に命を落とした。
ごめんね、みんな。
僕に力があれば、みんなを助けてあげられたのに。
父さんも母さんも。
みんな……
僕は、助けたかったんだ。
魔法陣の中から、一つ、二つと赤黒い球体が現れる。
それらが何か知っているのは、カートとナンシーだけだった。
「逢いたかったよ……みんな」
さあ、復讐を始めよう。
僕たちの幸せな日々を無残にも奪っていった、白魔法師たちに。
僕たちが味わったのと同じ絶望……いや、それ以上の恐怖を。
「ストーンヘンジへ」
ペンタグラムを拾ったカートが言うと、ナンシーがうなずく。
黒豹が彼に寄り添う。
球体も彼らのあとをつけて、移動魔法陣の中に入った。