紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
*
コートニーは東の空を見て、眉をひそめた。
まだ朝のはずなのに、空が赤く、赤く……まるで血の色に染まっていく。
「カートが動き出したんだわ」
独り言だったが、背後から返事がした。
「そうみたいやな」
意外にのんびりした声だった。
振り返ると、オーランドが神妙な顔をして、そっとコートニーの隣に寄り添う。
当然のように指を絡められ、コートニーはこんなときなのに不思議とおだやかな気分の自分に戸惑う。
「……どないしよ」
きっとオーランドも同じような気持ちなのだろう。
彼はずっとずっと優しかった。
何度もコートニーの欲しがっていた言葉を、ねだってもいないのにささやいてくれた。
慣れていない自分を、怒りもしなかった。
その優しさが余韻を残して、この非常事態についていけなくなっている。
「……どうしても、やらなきゃ気が済まないのね……」
「あいつにはあいつなりの理由があるんやろうけどな……」
空に黒い雲が立ち込める。
轟く雷鳴が何本も、山の向こうに落ちた。
「世界の終りみたい」
「その通りや」
カートが、この世界を自分のものにしようとしている。
まず手始めに行われるのは、白魔法師の殲滅だろう。
つないだ手に、どちらからともなく力が入る。