紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「ほら、まんま食べ、まんまを」


まるで幼児に言い聞かせるようにコートニーを起こすと、彼女は小さなテーブルの上を見て目を輝かせた。


「わーい!」


テディベアを放り投げ、彼女はイスに座り、勝手に食べ始める。


家主はまだテーブルについていないというのに。


「こらっ、「いただきます」せえ!」


「あーい、いただきまーふ」


「もう食っとるやないかい!」


そんなオーランドのツッコミも聞こえないようで、コートニーはパンも卵も、ものすごい勢いで胃に流し込んでいく。


「そんなに腹が減っとるんかい」


オーランドが自分の皿を差し出すと、コートニーはその上のものまで、ぺろりと平らげた。


「だってあそこじゃ、ろくなもの食べさせてもらえなかったんだもん!」


コーヒーを水のように喉を鳴らして飲み干すと、コートニーはぷはぁと息をついた。


「……『あそこ』って?どこやねん」


「……さあ?」


コートニーは口元をぬぐうと、コケティッシュな笑みで質問をはぐらかす。


無邪気かと思うと、小悪魔。
なんなんだこいつは。


< 22 / 276 >

この作品をシェア

pagetop