紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「ほら、まんま食べ、まんまを」
まるで幼児に言い聞かせるようにコートニーを起こすと、彼女は小さなテーブルの上を見て目を輝かせた。
「わーい!」
テディベアを放り投げ、彼女はイスに座り、勝手に食べ始める。
家主はまだテーブルについていないというのに。
「こらっ、「いただきます」せえ!」
「あーい、いただきまーふ」
「もう食っとるやないかい!」
そんなオーランドのツッコミも聞こえないようで、コートニーはパンも卵も、ものすごい勢いで胃に流し込んでいく。
「そんなに腹が減っとるんかい」
オーランドが自分の皿を差し出すと、コートニーはその上のものまで、ぺろりと平らげた。
「だってあそこじゃ、ろくなもの食べさせてもらえなかったんだもん!」
コーヒーを水のように喉を鳴らして飲み干すと、コートニーはぷはぁと息をついた。
「……『あそこ』って?どこやねん」
「……さあ?」
コートニーは口元をぬぐうと、コケティッシュな笑みで質問をはぐらかす。
無邪気かと思うと、小悪魔。
なんなんだこいつは。