紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
正しく言えば、ランスロットはイケメンではなく『元イケメンのおじさん』だが、まあいいだろう。
「さ、着替えや着替えや」
「ちょ、ちょっと待ってよ!強くてイケメンって本当なの?」
きゃんきゃんと吠えるコートニーに、昨夜着ていたゴスロリ服を投げて渡す。
「会ったらわかるやろ」
自分も浴室で着替えようと服をつかんだオーランドは、ふと動きを止めた。
コートニーの背後、ガラス窓の向こうからこちらに向かって、ひらひらと舞う蝶が見えたからだ。
その蝶は燃えるような赤色をしており、細やかな粒子を振り撒きながら……
ガラス窓を、すり抜けた。
「な、なに?」
突然部屋に乱入してきた珍客に、コートニーは目を丸くする。
彼女を無視し、オーランドの近くにはたはたと近づいたそれは、よく見ると蝶ではなく……。
蝶の羽を背中に生やした、小さな人だったのだ。
小さな人は髪も目も赤く、服の変わりに炎そのもののドレスをその身に纏っていた。
「妖精!?」
コートニーは悲鳴にも似た高い声を上げ、部屋のすみっこまで後ずさりした。