紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
『……承知した』
ドラゴンは、短く答えた。
すると、尖った爪の生えた鱗に覆われた前足を、一歩魔法陣の外へ出す。
「こっちへ!」
コートニーが叫ぶと、白魔法師たちはコートニーの後ろへ回った。
「王よ……僕は間違ったことをしていますか?
僕はあなたの王国を取り戻したいと、そう思って……」
カートがドラゴンに語りかける。しかし。
『人の世になど、未練はない』
ドラゴンはあっさりと、そう言ってのけた。
「そうですか……では、人間同士の争いに、今更出しゃばってこないでいただきたい!」
カートの魔法陣から、膨大な魔力が放出される。
それはますます黒豹と巨人を膨れ上がらせた。
ペンタグラムなんかなくたって、最強じゃないのとコートニーは思う。
その力を持った故に、あなたもひとりぼっちになってしまったのね……。
「古い王には失脚していただく!
新たな王は、この僕だ!」
カートが叫ぶ。
黒豹と巨人が口を開け、ドラゴンに向かって、まるで巨大な波のような火炎を吐き出した。
熱気が、コートニーたちを包む。
『……沈まれ』
ドラゴンは、言う。
その口から、冷たく凍った魔力が放出される。
ダイヤモンドを含んだように、銀色に光るそれは、カートの生み出した炎をいとも簡単に消し去った。
「すごい……」
それしか言えないコートニー。
言葉さえ失う白魔法師たち。