紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「すごいのは、コートニーや。
よく、あんなもん召喚できたな……」
小さくなっていく声が聞こえ、慌てて耳を澄ませた。
アーロン達がかわるがわる治癒魔法をかけてくれているようだが、力を使いすぎたせいか、オーランドはなかなか
立ち上がれない。
『どうする、息子よ。
まだ私に逆らうか?』
ドラゴンはカートに問う。
カートは答えず、杖を振った。
黒豹がドラゴンに牙をむく。
ドラゴンはひらりと避けるとその瞳を爪で切り裂き、巨人を吐息で凍らせた。
「くっ……」
これ以上は無駄だと悟ったか、カートはその場に立ち尽くした。
「なぜ……なぜ、邪魔をするのです……」
カートの悲痛な叫びが、鼓膜を揺らす。
『王国の復興など、地獄にいるお前の家族も望んでおらぬからだ。
そう、誰も』
はっと、カートは顔を上げる。
『……過ぎたものは、帰らぬ』
ドラゴンは淡々と言う。
カートは、その場に崩れ落ちた。
「ならば、王よ……僕も、地獄に連れて行ってはくださいませんか。
家族の元へ……」
ぽつりぽつりと落ちる言葉には、いつものような自信は感じられなかった。
この人もまた、寂しかったんだわ。
きゅっと手をにぎると、オーランドも小さくうなずいた。