紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……やっぱり、見えるんやな」
オーランドはコートニーを見つめたあと、妖精の方へ顔を向ける。
すると妖精はオーランドの耳元で、何事かを話す。
「うん……あ、そっか、そやな。
すぐ行くて伝えといてくれ」
妖精はうなずくと、来たときと同じように、ガラスの窓をすり抜け、ロンドンの空をひらひらと舞っていった。
「な、な、なんで妖精がいるのよ!!」
その姿が見えなくなると、コートニーが叫んだ。
その手にはいつのまにか、テディベアがにぎられていた。
「あれは僕の友達の友達や。
連絡に使われたんや」
「そ、そうじゃなくて」
「電話を使えば済むのにってことか?
それは──」
「そうじゃなくてっ!」
コートニーは勢いよく首を横に振ると、すがるような目でオーランドを見た。
「あなた、悪魔じゃないの?」
「……は?」
今度はオーランドが戸惑う番だった。
悪魔。
昨日まで自分を天使だと勘違いしていた娘が、いつどうやってその考えにいたったのだろう?