紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
『体は生きているのよ。
心臓も動いているし、あたたかいの。
だけどどんな魔法を使っても、起きてくれないのよ』
その言葉が、嘘だとは思えなかった。
でも、すぐには信じられなかった。
オーランドがベッドの脇にひざまづくと、アリスとフェイは気をきかせて、小屋から出ていった。
『コートニー……』
手をとり、呼んでみるが返事はない。
ただコートニーは、静かに眠っていた。
毒りんごを食べてしまった、白雪姫のように。
『なあ、起きてくれよ』
前髪をすくう。白い額がのぞく。
頬はうっすらと赤みを残し、唇はバラ色のままだった。
服はアリスが着替えさせたのか、キレイなゴスロリ服に変わっている。
『アホ……!
なんで僕をさしださんかったんや……!』
視界が涙でぼやけた。
ドラゴンは代償に、彼女の意識だけを奪っていったのか?
そんなの、ひどすぎる。
彼女は死ぬまでひとりで、ここで老いなければならないのか?
どう呼んでも答えてくれないコートニーの顔を見ていたら、ぽたぽたとその白い頬に、涙が落ちた。