紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
もう、笑えないよ。
どうして僕じゃダメだったのか?
悪魔の姿になっても、キミはずっと僕のことを、「オーランド」と名前で呼んでくれた。
どんなに嬉しかったか、キミにわかる?
命にかえても惜しくないと、本気で思っていたのに……。
『僕のせいか。
僕が、弱かったから……』
自分が、あのとき傷を受けなければ、今頃彼女は起きて笑っていてくれた?
『バカね、私はあなたが守ってくれて、嬉しかったのよ。
どんな姿になっても、私のことは見失わないでいてくれた。
本当に嬉しかった…。だから、気にしないで』
そんなコートニーの声が聞こえた気がして、余計に涙が溢れた。
どうして、守りきれなかったんだろう。
オーランドは、泣き続けた。
日が落ちたのにも気づかなかった。
やがて疲れて眠っていたオーランドの耳に届いたのは、小屋の戸が開く音。
びくっと体が震え、目が自然に開く。
そこに立っていたのは、ランスロットだった。
『病院に戻れ、オーランド』
彼はまだオーランドの上司のような口調で、そう言った。
『体に障るぞ。お前は死にかけていたんだから……』
体を治して、なんになる?
もうコートニーは笑ってくれないのに。
ぼんやりしていると、ランスロットがゆっくりと近づく。
『彼女が最後に言った言葉を、覚えているか?』