紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


いいにおいが、部屋中に充満している。


ああ、幸せのにおいだ。


美味しい料理に、お酒、懐かしい友人。


一同が酔っぱらっている間も、まりあはせっせとおもてなしフルコースを運んでいた。


「なんか手伝おうか~?」


オーランドはふらふらと、キッチンにいるまりあに近づく。


彼女は包丁を持ち、『きゅうりの浅漬け』なるものを切ろうとしていた。


「いいよ、オーランドはみんなと飲んでて」


エプロンをつけ、髪をまとめ、トントンときゅうりを切る彼女の腰に、腕をからませる。


小さな悲鳴が聞こえたが、そんなの無視。


「なあまりあ、瑛なんかと別れて、僕とええことしようや」


背中から抱き込んで耳元で言うと、ズドン!とすぐ横で音がした。


そちらを見ると、鬼の顔をした瑛が、まな板に包丁を突き立てていた。


「切られたくなければ、すぐにその手を離せ!」


昔と変わらないしゃべり方に、オーランドは吹き出す。


すぐに手を離し、瑛の肩に置いた。


「だって、自分らがあかんのやで。

僕に幸せ見せつけるから~」


ろれつが回りきっていない舌を、瑛の首にはわせる。


瑛は「ぎゃああ!」と叫んでのがれようとしたが、いつの間にかオーランドに強くだきしめられていた。


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